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ブログを移転します

以下のサイトに移転します。記事を移動した後、続きをアップする予定です。

# by mitisagasi | 2019-07-29 19:41

117_ドライな対応

予定では、昨日は31番竹林寺か32番禅師峯寺まで回るはずが、
途中のサンピア高知、旅館新橋屋、民宿みゆき、旅館菊水、
旅館海老庄と予約できず、某掲示板に書き込みをした結果、
迂回してJR高知駅前のビジネスホテルに泊まることになった。
(列島縦断名無しさん、花遍路さん、ありがとうございました)

最終的に半日ほど暇ができたので散策がてら高知城へ行ったり。
宿が見つかるまでパニック状態で気にする余裕もなかったが、
空気が、温度が、一変していることは肌で感じていた。

高知駅前で宿さがしの最中に無料案内所を見つけて相談した時。
「素泊まりでいいので5000円程度の安くて良い所ないですか?」
「価格指定による斡旋はできないんだよね」と素気無かった。
今までが親身すぎる土地柄だったせいかもしれないけれど、
今までの旅路では考えられないドライな対応だった。

いつの間にか、場面が一転していた。
それが普通なのだけど、それがあたしの知る日常だけど。
その当たり前に戸惑ってしまう自分がいた。

馴染みのない純朴な風景が、見慣れた雑踏に変化した。
見覚えのある消費者金融の看板、コンビニ、ファストフード。
冬の荒涼とした山々は無機質な灰色のビルの連なりとなり、
車が人が忙しなく行き交う、無関心な街になっていた。

7:00。
JR高知駅前のホテルを出発。

閑散としていたが、オフィス街への道を歩いていたようで
出勤途中のサラリーマンやOLがぽつりぽつりと現れては、
同じ方向に歩を進めた。

みんな黒っぽい格好だった。
黒いスーツ、黒いコート、黒いカバン。
所々、明るい色も散見されたが、全体の印象は黒だ。

その中にぽつんと、ジーンズにトレーナーの出で立ちで、
木の杖を突きながら、大きなブルーのリュックを背負う、
金髪のあたしがいた。

信号機の明滅に合わせ、流れは塞き止められては、
そのたびに流れは水嵩を増して、また、動き出した。
あたしも流れに身を任せて、止まっては動く。

全然、一体感は感じなかった。
「独り」を強く意識した。
# by mitisagasi | 2011-02-05 00:11 | 高知篇

116_やっかみにいい気味

四国遍路は、県ごとに発心・修行・菩提・涅槃の道場と呼ばれる。
最初の徳島県は発心の道場。寺と寺の距離も近く、遍路道から
外れると誰かが教えてくれ、すれ違い際に自然と挨拶がこぼれる
駆け出しの初心者に親切な現実を忘れるのどかな風景があった。

高知県は修行の道場と呼ばれる。次の寺まで数日かけて歩き、
来る日も来る日も代わり映えのしない同じ景色をひたすら歩く。
ガイドブックにはそれが辛くて高知市内で帰る歩き遍路が多い
とあった。

確かに、室戸岬を目指して国道55号を海と空の青だけを感じながら
変わらない景色の中を一心に歩くのは精神的にも苦しいものだった。
だけど、それよりも辛いことが高知にはある。

不意打ちのように突然、遍路を続けるかどうか、
振るいにかけられてしまうのだ──。

同い年の友人は、あたしと違って、大学卒業後、就職してる。
就職氷河期と呼ばれ、数十社も受けてやっと内定を勝ち取って。
一方のあたしは仕事に就く意味を見出せず、社会の歯車の中に
身を置く彼らを内心では馬鹿にしていた。格好悪いと思ってた。

「でさー、その上司がなんか理不尽なんだよね。
 言われたとおりにやってんのに、『ここ違う』とか言って、
 聞かされてない箇所の間違いをどーのこーのと続けるわけ。
 違うとか言われても知らないんだから防ぎようがなくね?
 それで挙句に『何度も言わせるな』とか言ってさ」
 
わざとらしいため息を洩らして、周囲の笑いを誘った。
彼らは変わっていった。就職直後にあった仕事への愚痴と
不満と働いていないあたしへの羨望とが、徐々に消えた。

「学生の頃だったらバイト先の店長から怒鳴られた時点で
 そのまま店を出て辞めちゃってない?」
「まあね。でも今はさすがに無理だけどさ」

上司の叱責を受けながら前向きに意欲を見せる彼らを見て、
あたしだけ置き去りにされていることは感じてた。
あたしの時間だけ学生時代で止まってしまって、
彼らはあたしの先を行き、あたしの知らない何かを知り、
共有していた。

多少の不満はあるものの誰もが選択する就職という人生の
通過点に何の疑問も持たず、最初こそ環境の違いに戸惑えど、
満足しているように見えた。

でも、そこには暗黙の了解で皆が口にはしない、
口にしたら今を肯定している大黒柱にひびが入りかねない、
何だかんだ取り繕ってはいるものの結局納得できていない
人生の理不尽さに対し、真っ向から拒否して逃げている、
働いてないあたしに対する若干のやっかみが含まれていて、
いい気味って思った。

追伸
# by mitisagasi | 2011-01-29 22:58 | 高知篇

115_ 蛇行する龍

12時40分、24番最御崎寺に到着。
手を合わせ、ご朱印を貰い、
慌しく境内を通り抜ける。
そして、室戸スカイラインへ出た。

眩暈を覚える絶景。
目前に迫る空。
視線を落とせば、
遥か下に室戸市が一望できた。

室戸市へ一直線に走る国道55号。
そこから分岐した室戸スカイラインは、
うねるヘアピンカーブをくり返して、
室戸岬の山頂、最御崎寺に到る。
その姿は空中を蛇行する龍のようだ。

おかげで、その道のりは無駄に長い。
行きの登山口730mと比べて、
帰りのスカイライン登口は1500km。
2倍以上の体力と時間を消費する。

元々は有料道路だったスカイライン。
車専用だったせいか歩道はなく、
白線で仕切られた狭い路側帯を歩く。
加速した下りの車が通り抜けるとき、
すぐそばを通るのか、風圧が怖い。

高いところは苦手ではないが、
空を隔てるガードレールは低く、
よろけて落ちないかとヒヤヒヤした。

まさに龍の背を歩く心地?
国道55号に合流する頃には、
ガクガク、膝が笑ってた。
# by mitisagasi | 2008-07-20 08:30 | 高知篇

114_迷うことなく通過

11時50分、高岡漁港を通過。
室戸岬に近づくにつれ、
空は陰り、雲行きが怪しくなる。
潮風は強まり、湿り気を帯びる。

一雨くる?
まだ雨具を着て歩いた体験はない。
焼山寺の境内で雪が舞うのは見たが、
雨具が必要なほどひどくはなかった。

確か、雨具は荷物の一番下に収まってる。
これから降り始めたら、その雨具を取り出し、
雨用ズボンを重ねて履いて、
この場合、道端で履くしかないよね?、、、
そして、リュックの上からポンチョをかぶる。

それってイコール、休憩がしづらい。
簡単にリュックを投げ出せなくなるし、
濡れた道路に腰を下ろすこともできなくなる。
うーん。考えるだけで手間だし面倒だ。

途中、御蔵洞を通過。
御蔵洞は空海が開眼し、
その名の所以となった場所でもある。

洞窟から見える景色は空と海。
それをガイドブックの写真で見たとき、
ぜひ訪れたいと思った場所だ。
しかし──。
空模様に、迷うことなく通り過ぎてしまった。

追伸
# by mitisagasi | 2008-07-13 07:12 | 高知篇
今日も晴れ渡る空に、穏やかな海だった。
一定のリズムで聞こえる波音が耳に心地良い。
前方には昨日意地になって歩いた夫婦岩が佇む。

意地で歩いた道のりはうんざりする長さだったが、
今日は拍子抜けするほどあっさり、夫婦岩を通過。
どうやら貰った貼り薬が効いたようだ──。

昨夜もお馴染みの顔と夕食を囲み、
いつものように熱燗のお相伴にあずかるあたし。
顔が真っ赤に色づく頃にお開きとなり、
千鳥足の御隠居さんを部屋まで送ったあと、
あたしは少し、健脚さんの部屋にお邪魔する。

「これ効くから、足の裏に貼って寝てみ」
と、薬を挟んだ油紙の貼り薬を手渡される。
言われた通りにすると、無理強いさせて痛んだ足が、
翌朝、目覚めるとだいぶラクになっていた。

そうして、とある漁港にたどりつくと、
漁師たちが一塊となって漁網の手入れをしていた。
通り過ぎるあたしに、何とはなしに、声が飛ぶ。

お遍路さん? 何歳? どこから来たの?
ずっと歩き? いつから歩いてるの?
今日はどこから? 今日はどこまで?
矢継早の質問に、次々受けるあたし。
「今日は津照寺までは行きたいです」
そういうと、何名かが一人の漁師を指した。

「こいつの家、そのすぐそばだ」
「広い家だ。お接待で泊めてもらえ」
「嫁さんいねえし、年行った母ちゃんと二人だけだ」
口々に好き勝手に囃したてる仲間を尻目に、
名指しされた漁師は俯いて手を動かし続ける。

いつもこうして、からかわれるのだろうか?
「いやいや。だめだめ。気にしないで。」
照れ笑いともいえぬ苦笑いを顔に浮かべ、
嵐が過ぎ去るのを待っている。 そんな彼を放って、
別の漁師が今夜みんなで飲もうというので、
携帯番号を書いたメモを手渡した。

夕方連絡するからちゃんと出てなと念押しされたが、
その日、彼らからの連絡はなかった。
それにホッとする自分。そして──。
きっとあの漁師も同じ気持ちでいたに違いない。

追伸
# by mitisagasi | 2008-04-17 23:25 | 高知篇

112_亡骸の海

7時40分、ロッジ尾崎を出発。
広がる青空、海の群青、コンクリートの灰色。
いつもの単調な景色が、霞む室戸岬まで続く。

生き物を彷彿とさせる生臭い香り、
その苦手な潮風にも、すっかり鼻が慣れた。
海を身近に感じ始めたのは、この頃からだろうか?
出身の長野は四方を山に囲まれているため、
海といえば新潟の海を指し、遠い存在だった。

そんな思い出の冬の海は、
荒々しく波立つ、くすんだ鈍色の海だった。
だから、初めてこの沿岸に広がる、
深い青を湛えた穏やかな海を見たとき、
ちょっと感動した。そして別の海を思い出した。

夏休みに何度か遊びにいった祖母の家。
その裏手にも鈍色の海が広がっていたのだが、
あるとき遠出した海は、忘れられない海だった。

沖に小さな島があり、中学生くらいの子達が、
誰が最初につくか泳ぎを競いあっていた。
「島まで行ってみるか?」と父親に聞かれたが、
泳ぐ自信がなくて首を横に振ったのを覚えてる。

そばの岩場からチョロチョロと流れる水を、
滝に見立て、修行とポーズを決める子供に混じり、
水しぶきに近づくが、思いの外、冷たくて海に駆け込む。
その海は温水プールみたいに暖かいから。

普段は水槽越しに見るカラフルな熱帯魚が泳ぎ、
そして、たくさんの熱帯魚の亡骸が漂う海だった。
死に際の熱帯魚が痙攣のようにビクつくのを見つけ、
幼心にも不気味に感じたが、 おかまいなしの賑わいに、
その感覚も次第に薄れていった。

今振り返ると、そこは原発に程近い海水浴場だった。
釈迦三尊から取ったその名は、その後、
冷却水漏れで大きく新聞紙面をにぎわせた。

追伸
# by mitisagasi | 2008-04-15 22:58 | 高知篇

111_迷走

12時、入木のバス停を通過。
朝方に通り過ぎたドライブスルーで、
自販機のパンを食べただけだったが、
二日酔いもあって、お腹はすいてない。

それよりも。
頭の中がぐちゃぐちゃだった。
気持ちの整理がつくまで、
誰にも会いたくなかった。
いや、誰にも会えない。

会ってどういう顔しよう?
どう振る舞えばいい?
わからない。わからないよ。

誰にも会わなくて済むように。
誰にも追い越されないように。
何かから逃げるようにして、
朝一番に宿を出て。
後ろを気にしながら歩き続けたのに。
なのに、健脚さんには追いつかれてしまった。

案ずるより産むは易い。
実際に会ってみればどうってことなかった。
でも、ちょっと、ぎくしゃくしてる。
ちゃんと健脚さんを見れない。

健脚さんも雰囲気を察してか、
昨日のことにはふれてこない。
それが、他人に気遣わせてしまったと気付き、
気遣わせた自分をどうしようもなく嫌になる。
「今日はロッジ尾崎に泊まります」と健脚さん。
それを聞き、あたしは別の宿にしようと決める。

夕方、ロッジ尾崎を通り過ぎるとき、
顔見知りの遍路が「今日はここや」と入っていく。
「あたしはもう少し先までいきますから」
そう言って別れたが──。

海は夕暮れに朱く染まっている。
次第に赤く熟れ、鈍くくすみ、
約2キロ先の夫婦岩が見えてくる頃には、
すっかり闇一色となっていた。

ここから3キロ先に民宿がある。
あと1時間位でつく。
そろそろ連絡しないと。
携帯を取り出し、宿に電話する。
しかし、呼び出し音に出る気配はなし。
「まさか冬場でおやすみ!?」

冬場の遍路のメリットは、宿屋が空いていること。
だから着く30分前に連絡すれば宿が取れる。
反面、冬場は休業している宿屋も多い。
近辺の宿屋を何軒か電話したがどこも出ない。
「あたし一体なにしてるんだろう」
19時40分、ロッジ尾崎に再び到着。

追伸
# by mitisagasi | 2008-01-15 01:48 | 高知篇
「そんなに入ってたんですか!?」
おにぎりに入っていた金額に、
関心しながら顔をほころばせる健脚さん。

「でもな、お金なんていらん」
自転車さんが言い放つ。
「どうしてですか?」と聞く、あたし。

「ああ、自転車さんの話ですか?
それは昨日聞いたからやめといて、
今日は玉虫さんの話にしよう」と健脚さん。
そんな彼は無視して自転車さんに向き合う。
「あたしも聞きたいです」

そして自転車さんは話し出した…
土地の値段が天井知らずだったバブル、
彼はあくどい手を使っては、
土地の売買で儲けていたそうだ。

他人が泣こうが喚こうがどうでもよかった。
良心の呵責なんてまったく感じなかった。
とにかく、お金が降るように入ってきて、
それが楽しくてたまらなかった。
それなのに──。

転機は突然訪れた。
息子にねだられたバイクを、
買い与えたのがきっかけだった。
息子はそのバイクで事故に遭い、
帰らぬ人となってしまった。

「あなたさえバイクを買わなければ」
「バイクがなければ死ななかったのに」
「どうしてバイクなんて買ったのよ」

泣き崩れる奥さん。
バイクさえなければ。あなたのせいよ…。
おまえだって賛成してたやんか…。
ケンカばかりの毎日が続く。
会話はそれだけだった。

一方、自転車さんは燃え尽きた。
たった一人の子供を失って、
楽しかった仕事がつまらなくなった。
儲けても、残せる相手はもういない。
「そう思ったら急に、
何もかもがむなしくなったんや」
# by mitisagasi | 2007-11-15 22:53 | 高知篇
ある日の夕暮れ時のことだった。
日暮れ前に山越えをしようと、
自転車さんが先を急いでいると、
後ろから呼びとめる声が聞こえたそうだ。

「お遍路さん、待って」
自転車さんが思わず振り返ると、
夕飯の準備中だったのだろうか、
エプロンにつっかけ姿のおばあさんが、
(彼の)自転車の後を走ってついてくる。

「台所からお遍路さんが見えて」
それで後を追ってきたというおばあさん。
どうしても接待したいから、家に寄ってと訴える。

だが引き返すには時間がもったいない。
何度も辞退する自転車さん。
しかし、食い下がるおばあさん。
とうとう根負けした自転車さんは、
来た道を戻ることに決めた。
a0095543_22553121.jpgおばあさんの家の前で待つことしばらく。
おにぎり数個をありがたく頂戴して、
自転車さんはおばあさんと別れる。
そして山越えの途中、
おにぎりを頂こうとかぶりつくと、
中からラップに包まれた紙幣が出てきた。

「!!!」
驚いたのは自転車さんだ。
慌てておばあさんの家まで戻る。

「お金に不自由してません。お返しします」
自転車さんは、おばあさんにおにぎりを返す。
「一度渡したもの。引き取るわけにはいきません」
頑として拒むおばあさん。

現金は持っていて困るものじゃない。
だから、持っていきなさい。
私だって誰にでも渡すわけじゃない。
おまえさんを見込んで追いかけたんだから。
(こういった接待は、ほぼ、ありえません)
# by mitisagasi | 2007-11-14 23:13 | 高知篇

生きるとは、幸せとは、豊かさとは何か?当時22歳女、一人旅。通し打ち四国108ヶ所歩き遍路の記録です。


by たまむし